リスミー(一般名:リルマザホン塩酸塩水和物)は睡眠薬の一種で、日本では1989年から発売されている比較的古いお薬です。
睡眠薬の中でも、「ベンゾジアゼピン系」という種類に属します。ベンゾジアゼピン系睡眠薬は、効果がしっかりと得られるため患者さんからの評判も良いお薬です。
重篤な副作用は少ないものの、お薬ですから副作用が全くない事はなく、特徴をしっかりと理解して使用していく必要があります。
ここではリスミーの効果や特徴、睡眠薬の中での強さや作用時間の長さの位置づけなどを、他の睡眠薬と比較していきながら紹介していきます。
1.睡眠薬の中でのリスミーの特徴
リスミーはどのような特徴を持つ睡眠薬なのでしょうか。
その特徴を簡単にまとめると、
- 強さはやや弱め
- 服用してから血中濃度が最大になるまで3時間ほどでゆっくり効く
- 半減期は8~13時間でまずまず長く効く
といった特徴があります。
睡眠薬としての強さは決して強いとは言えません。そのため「ちょっと効果が物足りないな」「あまり効かないな」と感じられる方もいらっしゃいますが、これは逆に言えば穏やかに効くため安全性に優れ、身体への負担が少ないという事でもあります。
服用してから血中濃度が最大になるまでは3時間ほどかかります。早い睡眠薬だと1時間ほどで血中濃度が最大になるものもあるため、即効性があるわけでもありません。
また半減期(血中濃度が半分まで低下するのにかかる時間)は約8~13時間ほどでまずまず長く効きます。
日本人の睡眠時間の平均は7~8時間くらいですから、人によっては起床後も多少お薬の効果が残ってしまう事もあります。
このような特徴から、決して使い勝手がいい睡眠薬とは言えません。万人にあっているというよりも、人を選ぶ睡眠薬ではあります。
例えば、「寝つきが悪いからすぐに眠れる睡眠薬が欲しい」「元々睡眠時間が短く、普段から4-5時間ほどしか眠れない」という方には即効性もなく、作用時間も長めであるリスミーはあまり向いているとは言えません。
しかし効果が穏やかですから、使いどころを間違えなければ安全に不眠症状を改善させる事ができるお薬でもあります。
例えば、「高齢なので弱い睡眠薬を使いたい」「強い睡眠薬は心配だから穏やかにゆっくり効く睡眠薬が欲しい」という方には、とても適した睡眠薬だという事も出来ます。
2.リスミーの作用時間はどのくらいか
リスミーは服用してからどのくらい効く睡眠薬なのでしょうか。
睡眠薬は作用時間で大きく4種類に分類されています。
- 超短時間型・・・半減期が2-4時間
- 短時間型 ・・・半減期が6-10時間
- 中時間型 ・・・半減期が12-24時間
- 長時間型 ・・・半減期が24時間以上
半減期というのは、その薬の血中濃度が半分になるまでにかかる時間の事で、
「おおよその薬の作用時間」の目安として使われています。
この中でリスミーは「短時間型」に分類されています。
服薬してから3時間ほどで血中濃度が最高値になり、半減期は約8~13時間です。
分類上は短時間型ですが、血中濃度が最大になるまで3時間もかかり、また半減期が8~13時間と長めであるため、中時間型に分類されてもおかしくはないお薬です。中時間型に近い短時間型という認識が正しいでしょう。
ちなみに他の睡眠薬と比較すると、リスミーの作用時間はどのような位置づけになるのでしょうか。
睡眠薬 | Tmax | T1/2 |
ハルシオン | 1.2時間 | 2.9時間 |
マイスリー | 0.7-0.9時間 | 1.8-2.3時間 |
アモバン | 0.8-1.2時間 | 3.7-3.9時間 |
ルネスタ | 0.8-1.5時間 | 4.8-5.2時間 |
レンドルミン | 約1.5時間 | 約7時間 |
リスミー | 3時間 | 7.9-13.1時間 |
デパス | 約3時間 | 約6時間 |
サイレース/ロヒプノール | 1.0-1.6時間 | 約7時間 |
ロラメット/エバミール | 1-2時間 | 約10時間 |
ユーロジン | 約5時間 | 約24時間 |
ネルボン/ベンザリン | 1.6±1.2時間 | 27.1±6.1時間 |
ドラール | 3.4±1.6時間 | 36.6±7.3時間 |
ソメリン | 4-12時間 | 42-123時間 |
ダルメート/ベジノール | 1-8時間 | 14.5-42.0時間 |
(Tmax:最大血中濃度到達時間 T1/2:半減期)
これらはリスミーと同じベンゾジアゼピン系睡眠薬ですが、同じベンゾジアゼピン系でも作用時間が睡眠様々であることが分かります。
Tmaxが小さい睡眠薬は、服用してからすぐに効果が出ると言えます。そのため「寝つきが悪いから、服用してすぐに効果が出るお薬が欲しい」という方に適しています。
一方で「夜中に何度も起きてしまうのが困るから、一晩中長く効く睡眠薬が欲しい」という方にはT1/2がある程度長い睡眠薬が適しています。
どの睡眠薬が良い・悪いという事ではなく、自分がどのくらい眠りたいのか、どのような不眠症状で困っているのかで、自分に向いている睡眠薬は異なってきます。
リスミーは、飲んでから効果が最大となるまで3時間ほどかかるため、即効性はあまり期待できません。しかし10時間前後の反撃を有するため、長く眠りたい方には有効な睡眠薬と言えるでしょう。
3.リスミーの強さはどのくらいか
前項ではリスミーの作用時間についてみてきました。
では次にリスミーの睡眠薬としての「強さ」を考えてみましょう。リスミーは睡眠薬の中ではどのくらいの強さの位置づけなのでしょうか。
薬の効きは個人差もあるため、一概にいう事は難しいのですが、一般的な位置づけでいうと、リスミーはベンゾジアゼピン系睡眠薬の中で「普通~やや弱め」くらいの強さを有する睡眠薬です。
しかし効果が弱めでも服用量を増やせばその分効果は強くなります。リスミーは最大2mgまでの量で使います。だいたい1mgから開始する事が一般的ですが、それで「効きが弱い」と判断された場合、1.5mgや2mgに量を増やせばそれだけ効果は強くなります。
4.リスミーはどのような人に適した睡眠薬か
不眠は大きく2つタイプに分けられます。
一つは「寝付けないタイプ」で、これは「入眠障害」とも呼ばれます。もう一つは「寝てもすぐに起きてしまうタイプ」で、これは「中途覚醒」と呼ばれます。
一般的には、
- 入眠障害には超短時間型、短時間型
- 中途覚醒には中時間型、長時間型
の睡眠薬が適していると言われています。
リスミーは短時間型ですから、このセオリー通りにいけば入眠障害に向いている睡眠薬になります。
しかしリスミーは短時間型と言えども、血中濃度が最大になるのに3時間もかかるため、決して即効性に優れるとは言えません。
しかし半減期は8~13時間と長めであり、中途覚醒にはある程度適していると言えます。
また効果も穏やかである事から、
- あまり強い睡眠薬を使いたくない方
- 入眠障害よりも中途覚醒を改善させたい方
に適している睡眠薬であると言えます。
効果が穏やかな分、副作用も起こりにくく、鎮静によるふらつきや転倒を起こしにくいので、高齢者の方にも比較的使いやすい睡眠薬です。
5.リスミーの作用機序
リスミーは、どのような作用機序で眠りを導くお薬なのでしょうか。
リスミーをはじめとしたベンゾジアゼピン系は、GABA-A受容体を強める作用を持ちます(GABA:ɤアミノ酪酸)。
私たちの身体の神経に存在するGABA-A受容体が刺激されると、
- 催眠作用(眠らせる)
- 抗不安作用(不安を和らげる)
- 筋弛緩作用(筋肉をゆるめる)
- 抗けいれん作用(けいれんを抑える)
といった4つの作用がもたらされます。
ベンゾジアゼピン系を服用すると、これらのはたらきが強まります。ベンゾジアゼピン系の中でも、特に催眠作用を強めることに優れるおくすりがベンゾジアゼピン系睡眠薬であり、リスミーもその一つです。